ライブコマース

ライブ配信を活用したマーケティング戦略にまつわる6つの誤解を検証

現在、ライブコマースが話題となり、大きな成長を遂げています。しかし、ライブコマースを始める前は不安もあり、誤解も耳に入ってくることでしょう。この記事では、そんなライブコマースに関する6つの誤解の真偽について1つずつ解説します。

ライター:Priyam(プリヤム) 

2022年末までに、中国トップのライブコマースプラットフォームは、6000億ドル相当(81兆円※)のGMV(流通取引総額)に成長するでしょう。ライブコマースは2016年に登場したばかりですが、中国のEC売上全体の20.3%を占めるまでになりました。企業は、デジタルショッピング体験を強化するこの新しい方法により、コンバージョン率を30%~40%と従来のECと比較して10倍向上させました。

Screenshot-2022-02-16-at-5.27.31-PM出典:Statista 2022

中国では2021年の「独身の日」に向けて、2人のインフルエンサーが12時間にわたってライブ配信を行い、30億ドル(4085億円※)相当の売上と約4億8800万人の視聴者を集めました。アクセスが集中したことで、TaoBaoのプラットフォームが一時停止するほどでした。これほど大きなインパクトをもたらしたECプラットフォームを見たことがあるでしょうか?

Mckinseyによると、ライブコマースによる売上は2026年までに全世界のEC売上の20%に達するといいます。またStatistaのレポートでは、コロナ禍においてだけでもライブコマースの利用は76%もの急増を記録しています。

Fireworkの共同設立者兼CEOであるVincent Yang氏は、Coresight ResearchのCEOであるDeborah Weinswig氏と共にウェビナーを開催し、ライブコマースに関する6つの誤解を検証しました。

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この対談では、中国におけるライブ配信ショッピング急増の主な要因と、企業が持続的な成長のために効果的なライブコマース戦略を構築する方法について触れています。ウェビナーの全容はLinkedinでご覧いただけます。


この記事では、ライブコマースに関わる6つの誤解を指摘し、企業が2022年においてビジネス成長のためにライブ配信ショッピングを最大に活用する方法について説明していきます。

誤解1:ライブコマースがマーケティング効果を発しているのは大規模なマーケットプレイスである

Amazon-Live-example現実: ウェブサイト/アプリにエンドツーエンドのライブコマースを導入している企業は、カスタマージャーニー全体で大きな効果を実感している

欧米のライブコマースについて論じる時、Amazon Liveのような既存プレイヤーは、ECにおけるシェアの大きさで、AlibabaやTaobao Liveと比較されています。しかし実際には、大規模なマーケットプレイスは、ライブコマースを利用して十分な視聴者数を獲得できていません。Amazon Live を例にとると、ここ数年、Taobao の成功を再現しようとしていますが、実際は十分な視聴者数やコンバージョンの獲得に苦労しています。普段の配信の視聴者数は1000人未満であり、ビジネスの成長に影響を与えるほどの数字ではありません。

その理由は、オンラインショッピングを検索で簡略化するというマーケットプレイスの構造にあります。アマゾンの消費者は検索を積極的に使用しており、コンテンツ主導のショッピングで新しい製品やブランドを見つけようとはしていません。 Amazonの消費者は既に買いたいものが決まっていて、その中でできるだけお得な商品を探しているのです。さらに、ライブ配信を行っているインフルエンサーは、消費者の購買行動にあまり影響を与えていません。最近ではコンテンツの質も低迷しており、平均的なマーケットプレイスの買い物客に対してより効果的な体験を生み出せていません。

ライブコマースのプラットフォームに精通し何を期待すべきかを理解している中国の消費者と、欧米諸国の消費者を比較すると、考え方が完全に異なることがわかります。中国では、ライブコマースの体験やコミュニティの存在が、単に便利な買い物をするだけでなく、全体的な体験の一部となっているために多くの人々を引き寄せているのです。採用されたライブ配信者(KOL=キーオピニオンリーダー、マイクロインフルエンサー)は、主な役割として高いのコンテンツエンゲージメントをサポートし、購入の意思決定を促すための実演や情報を提供しています。

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誤解2:ライブ配信を活用したマーケティングは難しくてコストがかかる

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現実:スマートフォンのカメラとライブコマースアプリを使えば、店頭から強力なライブ配信コンテンツを短時間で制作できる

ライブ配信コンテンツに対する一般的な誤解は、専門機器や高額なギャラのインフルエンサーを必要とし、スタジオで制作されるため、制作費がかかるというものです。しかし、これは真実とはかけ離れています。中国の成功例では、良質でエンゲージメントの高いライブ配信キャンペーンは、自宅にいながら簡単なスマートフォンアプリと一般の照明を使用して制作されています。

中国トップのライブコマースプラットフォームでは、販売員やマイクロインフルエンサーを利用したキャンペーンが大成功を収めており、彼らは豊富な製品知識と情熱によって大勢の人から支持されています。彼らによって、ユーザーは製品やブランドに関する多くの有益な情報を得られるからです。その結果、ライブ配信は非常に高いエンゲージメントとコンバージョンを得ているのです。

ライブコマースで最も成功している企業は、店頭を活用して実店舗でのショッピング体験を再現しています。店頭で販売員が簡単なライブ配信キャンペーンを行い、顧客や訪問者に実際の買い物体験のようなメリットを提供しています。

 

誤解3:ソーシャルメディアでのライブ配信がマーケティングに効果的である

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現実:ウェブサイトにライブコマースのエコシステムを構築する方が売れる

多くの企業はソーシャルメディアのトラフィックはコンバージョンを生むと勘違いしています。しかしソーシャルメディアのトラフィックは購買意欲が低いため、閲覧数がそのまま売上につながるとは限りません。多くのデータによれば、ソーシャルメディアのライブコマース設定におけるカートへの追加率は、0.1~0.2%にすぎないのです。それに比べてブランドウェブサイトでは、購買意欲が高いトラフィックを持ち、実際に97%の取引が発生しています。

多くのソーシャルメディアプラットフォームでは、多様な視聴者層に向けた様々なテーマのUGC(ユーザー生成コンテンツ)が乱雑に溢れかえっています。企業は、大量のコンテンツの中で注目を集めようと常に競争しています。その中で注目され、コンバージョンし、最終的には顧客維持(リテンション)を最大化するようなコンテンツの作成は、非常に難しいといえるでしょう。

ソーシャルメディアは、衝動買いには向いているかもしれません。しかし、顧客体験を大幅に向上させる魅力的なライブコマース成長戦略の構築を目指す企業にとって、ソーシャルメディアが主流にならないことは確かです。

 

誤解4:ライブ配信は主にセールスプロモーションに使われる

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現実: ライブコマースは、企業の認知度と顧客維持率を高め、従来のECからオムニチャネルへのDXを推進する

立体的でモバイルに最適化された動画ショッピング体験への移行は、新時代の顧客が好むショートライブ動画の活用により、企業と顧客のつながりを支援します。企業は、ブランド認知や強力なコミュニティづくりのためにライブ配信を活用しています。ライブ配信キャンペーンにより、顧客は動画を使った没入感のあるインタラクティブな買い物体験に参加するだけでなく、ウェブ上で他の顧客との交流も楽しむことができます。

ライブコマースの「エンターテインメント」要素は、顧客をリピーターにし、口コミでさらに顧客を呼び込んでコミュニティを形成し、顧客維持率とトラフィックを増加させます。

例えば、食料品大手のAlbertsons社は、顧客が単に買い物をするだけでなく、コンテンツからインスピレーションを得られるよう、同社のプラットフォームで魅力的な動画中心のショッピング体験を実現しました。Albertsons社の目標は、ウェブサイトで「食のPinterest」体験を実現し、教育的でインタラクティブな動画コンテンツを通じて、顧客が食についてより深く学べるようにすることでした。この企業は、学びとインスピレーションを得ながら、買い物をするためにウェブサイトを何度も訪れる熱狂的なコミュニティを育てています。

また、ライブコマースの体験は、詳細な製品知識の提供を通じて消費者に大きな価値をもたらし、顧客の購買意思決定に大きく役立っています。

例えば、 衣料品小売業者は、インタラクティブな動画を使って衣服のフィット感やスタイリングをうまく実演し、消費者に製品の特長を理解してもらうことで、返品率の減少に成功しました。

 

誤解5:有名人を起用したライブ配信ほどマーケティング効果が高い

 

 

現実: ライブコマースで売上を伸ばすには、知識豊富な販売員と視聴者とのつながりを作ることが効果的である

今日のクリエイター経済において、インフルエンサーは、ソーシャルメディアによるセレブ主導のブランドプロモーション分野を率いてきました。しかし、新時代の消費者(Z世代とミレニアル世代)はスポンサーやPRと紐付いたものを嫌悪しており、もはや有名インフルエンサーは売上に持続的な影響を与えることはないでしょう。

企業がインフルエンサーマーケティングをやりすぎたため、企業と製品を応援しているインフルエンサーとの間のつながりが希薄になりました。その結果、エンゲージメントが低く、消費者の購買意欲を刺激しない、質の低いライブ配信キャンペーンばかりになってしまったのです。

中国の企業は、販売員やマイクロインフルエンサーを活用し、ライブ配信を利用したショッピングイベントを成功させるための手法を明確にしました。販売員は、製品ラインアップに関する最新かつ正確な情報を持っています。彼らは、消費者を購買プロセスに進ませる、高いエンゲージメントと価値のあるインタラクティブなコミュニケーションを作り出せるのです。

ライブ配信キャンペーンを成功させるには、カスタマージャーニーにさらなる価値と購買決定を容易にする実用的な情報を提供し、顧客と直接的につながることが必要です。

 

誤解6:ライブコマースでは売上のコンバージョントラッキングのみが重要である

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現実:ライブコマースは、第一印象からコンバージョン、リピート購入まで、カスタマージャーニー全体を観察すべきフルプロセスのソリューションである

平均的なECサイトのカート投入からチェックアウト率は約2%で、バイヤージャーニーは通常7日間です。コンバージョン率だけを見るのは、短期的な利益に焦点を当てた非常に近視眼的なアプローチです。ライブコマース戦略を構築する正しい方法は、カスタマージャーニー全体を通した動きを観察することです。


ここでは、企業がトラッキングするべき3つの指標を紹介します

  • エンゲージメント時間(セッションの長さ):ライブ配信では、セッションの長さを即座に最大で 2 倍から 4 倍に増やすことができます

  • エンゲージメント率:平均的なコンバージョンサイクルに合わせるために、バイヤージャーニー全体のすべてのタッチポイント(クリック、チャットでの対話、リアクション、動画視聴、カートへの追加率など)を考慮する必要があります

  • リピーターユーザー:新しい配信、ショッピング動画、アーカイブコンテンツなどを見るためにウェブサイトに戻ってきたユーザーをトラッキングすることは、以前の興味に基づいたカスタマイズや、よりパーソナライズされたショッピング体験の提供のために重要です。

 

まとめ

従来のECに革命を起こしているライブコマースは、店頭でのショッピングの長所とオンラインショッピングの利便性を組み合わせた、強力な新しいオンラインショッピングの方法です。

ライブコマースのメリットは以下の通りです。

  1. サステナビリティの向上 - 返品を最大50%削減できます

  2. KYC(顧客確認)プロセスの有効性の向上 - 重要な顧客データを収集することでより深く顧客を知ることができます

  3. 販売チームの強化 - 販売員の専門化と店舗の活用によるコンバージョンの最大化が望めます

Firework は、最高のプラットフォームとサービスにより、ハイパフォーマンスなライブコマース体験を実現します。Fireworkのソリューションアーキテクトにご相談いただければ、貴社ブランドがどのようにライブコマースから利益を得られるかをご案内いたします。

※2022年7月時点のレート換算

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