縦型ショート動画・ライブコマースのリーディングカンパニーである「Firework(ファイヤーワーク)」を提供するLoop Now Technologies(本社:米シリコンバレー、CEO:Vincent Yang)の共同創業者Jerry Lukが2022年8月、東京で開かれた「Firework JAPAN FES 2022」のため初来日しました。イベントでは約100人の参加者を前に、「Firework誕生秘話と目指す世界観」と題しスピーチしました。
Fireworkは自社サイト内のエンゲージメント向上やコンバージョンの改善、ファンの醸成に寄与し、小売企業にとってはリテールメディアの構築やECサイトの強化、メディア企業にとっては新たな視聴体験やマネタイズポイントの創出など、各企業の動画DXを推し進める原動力になっています。
さらにFireworkは今年5月、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2が主導するシリーズBでおよそ1億5000万ドル、日本円にして約190億円を調達。日本国内においてもFireworkを導入する企業やブランド、メディアが急拡大しています。共同創業者Jerry Lukが日本国内で初めて語った、Fireworkの思想やビジョンとは──。全文をご紹介します。
みなさん、こんばんは。Fireworkについてお話をすることができて光栄です。
私自身のバックグラウンドについてお話しします。私は生まれて16年間を香港で過ごし、中国と中国語の価値観を学びながら、西洋の教育を受けて育ちました。またラーメンやお寿司を食べて、日本の漫画を読み、日本の音楽を聴いて育ちましたので、日本からの影響も非常に大きかったです。ついにここ日本に来ることができ、とても興奮しています。
そして、その後20年はシリコンバレーで、テクノロジーと成功するインターネット企業をつくりあげる方法について学びました。
「Jerry、あなたはどこの国の出身なの?」と難しい質問をする人もいましたが、私は自分自身を「グローバル人」だと思っています。ひとつの国だけでなく、世界中のどこでも通用するようなインパクトを生み出したいのです。
いま、私たちは「Web3.0」の時代にいますが、私がシリコンバレーのLinkedInでキャリアをスタートさせた時、多くの人に「Web2.0のようなものですか?」と尋ねられました。
そこで、この写真をご紹介しましょう。私がLinkedInで働き始めた時の写真です。これが当時の全社員で、中心にいるのがLinkedInの共同創業者でありCEOのリード・ホフマンです。そして、ここに写っている壁の裏側には、もう一つのスタートアップがありました。YouTubeという会社です。
LinkedInで私と私のチームは、Appleと深くお仕事をさせていただきました。私たちが開発したLinkedInのモバイルアプリは、最初のiPhone向けアプリの一つとなりました。「グローバル人」として、私たちはこのモバイルアプリが世界の市場に出ていくよう手がけていました。当時私は、日本語対応についても進めていました。
この時の経験は、私がインターネット企業を構築するためにとても役立ちましたね。世界に通用するサービスを創るポイントは「タイミング」、「スピード」、そして「スケール」です。
適切なものを適切なタイミングで提供するために、タイミングは重要ですね。例えば「Web2.0」のフェーズでは、SNSが勝者となりました。2004年に誕生したFacebookは、2006年までの3年間で急成長しました。それ以前にもSNS企業はありましたが、結局ほとんど使われなくなりましたし、2006年以降にはFacebookに代わる巨大SNSは生まれていません。タイミングが大事なのです。
スピードとスケールも重要です。当時私たちはLinkedInで世界中の8000万人をつなぐエコシステムを短期間で作り、人々の「つながり」の変革にチャレンジしました。
20年ほど前から、小売、店舗、出版社などのビジネスモデルに、デジタル・トランスフォーメーションと言われる転換が起こりました。そういったビジネスはいつでも、どこからでも顧客獲得を目指すモデルなので、当時私はデジタル化によってすべてが「正しい」方向へ向かうことを想定していました。しかし、そうではなかったのです。
ウェブサイトのあり方はいまだにそれほどスマートではありません。例えば一般的なECサイトの場合、ユーザーが質問を投げかけようと思ってもできないし、掲載されている写真も限られているし、写真の下にあるテキストは、その商品をうまく表現できていないことが多々あります。
オンラインで買い物をしたらまったく違ったものが届いてしまい、そのまま返品してしまったことが何度もあります。Eコマースの返品率は実に20%にものぼるというデータもあります。
そこには何のつながりもありません。人々はウェブサイトでものを買ってはいますが、店員さんとやり取りをするといったつながりは感じられないので、本当の意味でのショッピング体験はできていないと言えます。
今のECサイトは、いろいろな意味で「自動販売機」と同じです。人は自動販売機にはつながりを感じませんし、自動販売機でパーソナライズな買い物体験を得ることはできません。「この自動販売機をリピートしよう」とはあまり思いませんよね。自動販売機と同様に、現在のECサイトは真にユーザーとつながることができていないから、サイトの滞在時間が非常に短くなってしまうのです。
だから、みなさんは求めているのではないでしょうか。人々が本当につながることができる新たなフォーマットを。
SNSについてはどうでしょう? 中国を除いては、5、6個の代表的なSNSアプリを中心とした世界的なエコシステムがあるように思います。しかし実際のところ、人はSNSで買い物をしないのです。2021年にはECの売上の96%がSNS以外で生まれたと言われています。つまりどんなビジネスにとっても、ウェブサイトは依然として非常に重要なのです。
だから、世界を変えましょう。私たちFireworkのビジョンは、消費者と販売者がつながる世界を変えることです。そのために、私たちはインターネットを「再発明」します。
私たちのビジョンをお伝えします。30年前は物理的な店舗(フィジカル)での購入がメインでした。デジタル化が進んだ20年前からは、デジタルでの購入ができてきましたが、それでも人はフィジカルでものを購入しています。
まず、今のウェブサイトは一方的なコミュニケーションで、ユーザーは商品の写真や値段に目を通すだけです。対話することはできません。Fireworkでは、生身の人間との双方向のコミュニケーションが実現できるのです。このエコシステムでは、世界中の誰もがフィジカルな体験と同様の体験をデジタル上で体感することができます。ライブ配信でユーザーは「もっとよく見せてほしい」と配信担当者に要望することができるのです。
そしてFireworkのオープンなエコシステムでは、誰もが公平にチャンスを得ることができます。Fireworkを自社サイトに導入すれば、FaceebookやInstagramのような「ウォールドガーデン(壁に囲われた庭)」と言われるSNSプラットフォームにリーチをコントロールされることはありません。
さらに重要なことは、出版、小売、店舗、ファッションブランドまで、あらゆる類のビジネスが、自社サイトを介してユーザーと直接、互いにつながる方法を手に入れることができるということです。一番大事な顧客データ、ファーストパーティーデータを取得、分析、活用することができるようになります。Fireworkは無限の可能性を持っているのです。
私の好きな日本の漫画『ドラえもん』に「どこでもドア」という道具があります。あらゆるビジネスで、自社サイトからドアの向こうにいる消費者を見つけられる「どこでもドア」を設置できるシステム。それがFireworkです。自社でデータを持ち、直接顧客とつながることができます。
そして今日、私たちは新たな未来の始まりを迎えました。私たちにとっても、やはり「タイミング」、「スピード」、「スケール」の3点が重要になってきます。
まずは「タイミング」。適切なソリューションを適切なタイミングで、ということですね。なぜFireworkが世界に打って出るのがこのタイミングなのか、疑問に思われる方もいるかもしれません。
まずは5Gの普及です。ソフトバンクなど通信会社のおかげで5Gのモバイルインターネットが拡大し、ライブ配信は新しい「言語」となりました。これは世界共通の現象で、アジアでも、アメリカでもそうです。若い世代だけでなく、あらゆる世代が動画に夢中になっていますし、グローバルで常にFaceTimeが使われています。ライブ配信の流れは普遍的になってきました。そして、この世界では誰もが、いつでもどこでも、何でも見つけることができます。
近年、人々は「機能」のためにではなく、「価値観」のためにモノやサービスを購入するようになってきています。価値観の違いとは何でしょう。ECサイト上でユーザーが商品説明の長い文章を読んでも、価値観の違いに気づかないのも無理はありません。それでは、どうやって価値観の違いを伝えるのでしょうか。
Fireworkが大切にしているのは、企業やブランドのストーリーや価値観を伝えること。私たちの縦型ショート動画の成果、ライブ配信の成果は、それによって究極的には、人と人、企業と人とのつながりを強くしていくことにあります。
ファーストパーティデータ(企業が自社の顧客やwebサイト訪問者について収集・保有しているデータ)はあらゆるビジネスにとって非常に重要です。そして、SNSのような「壁に囲まれた庭」で行うあなたのビジネスでは、SNSはあなたに無料ではなかなかトラフィックを与えてくれません。
Instagramで10万人以上のフォロワーがいる場合でも、オーガニックのトラフィック(ユーザーの訪問数や閲覧数)はそのうちほんの数%しか得られなかったというデータもあります。これがみなさんがトラフィックを購入しないといけない理由です。
ただ、私にとってはなぜみなさんがFacebookやInstagramでなぜトラフィックを買っているのかがわかりません。顧客とデータを自社で保有することができる、自社のウェブサイトへのトラフィックを充実させたいと思いませんか?
一部の方々がこのような真実に気づき始めている今が、私たちにとって適切なタイミングであり、お客様がFireworkを使いたいと思っていただいている理由です。
2つ目のポイントはスピードです。2021年にライブ配信を開始したFireworkは、そこから1年足らずで世界最大級のライブコマース企業になり、2億1500万ドル以上を調達しました。ソフトバンクグループには本当に感謝しています。
今、37か国で300人以上、世界最高のメンバーがサービス開発と提供に従事しています。我々は、Alibabaから来てくれたメンバーや、Snapchatなどを経てYahooの元営業責任者を務めたメンバーを擁しています。他にも元Googleの検索および小売部門の元責任者や、Walmartの元マーケティング責任者、元American Expressの商取引や決済のスペシャリスト、元Spotify・Uberなどのエンジニアが仲間として来てくれています。
私たちは世界最高のチームであり、誰よりも速いスピードで世界にスケールしていくという大きなビジョンを持っています。今、世界中で1000以上の企業がFireworkを利用しており、2億5千万人以上の消費者に、仲間たちと共にFireworkを届けることができていますが、私たちはさらに規模を拡大する必要があります。
スケールという点において私たちの目標は、3年後、10億人以上の人々に、Fireworkを通じてあなたのウェブサイトやアプリを利用してもらうことです。これを叶えられるのはFireworkの導入企業のみなさまをいかに増やしていけるかにかかっています。
そのために私たちは何をすべきか。まず、ユーザーエクスペリエンスをアップグレードします。これはウェブサイトでは初めての試みですが、ユーザーがお客様のウェブサイトを訪れた際、「中の人」と交流することができるようにします。「商品をもっと近くで見せてくれませんか?」「もっとこんな商品が見たいです」と。このような体験は今日のウェブサイトではできません。24時間365日、私たちは本当にリアルタイムの相互作用の中で人々の「経験」をアップグレードしていきます。
Fireworkは日本を最重要マーケットとして捉えています。日本企業のお客様からのご要望に合わせた開発も多く行ってきました。実店舗を持つブランドには、オンラインとオフラインの双方にリーチできるようご支援したり、オンラインのサイト上で、また実店舗にQRコードを設置し、お客様がQRコードをスキャンすると、誰もがFireworkの動画を体験できたりするようになります。
もちろん、ファーストパーティデータ、つまりダッシュボード分析によって、顧客に何が起こっているのか、顧客の行動をブランドが理解できるようになります。動画データそのものの使い方としては、どの商品がヒットするのかが一目瞭然になります。テストメッセージの後、マーケティングキャンペーンに多額の資金を投じる前に、エンゲージメントを確認できます。
Fireworkは製品開発にも活用できます。ライブストリームでプロトタイプを公開し、そこにいる熱心なお客様にフィードバックを求めることができます。私たちは、みなさまの事業を成功させるための完全なサービスソリューションを提供できるのです。
先ほど、私は「グローバル人」として自分自身についてと、Fireworkをお使いいただくためのエッセンスをお届けしました。私たちFireworkもグローバル企業です。そして、「世界のためにインターネットを再発明する」という私たちの使命を達成するために、日本は私たちにとって最も重要な市場としてフォーカスしています。
Fireworkは本日お集まりいただいた日本企業の皆様と、多くのパートナーシップを築き、皆様との協業を積極的に進めていけたらと考えています。
私は今回の来日で、ソフトバンクの携帯電話を契約しましたので、アメリカと日本を行き来しながら、ここ日本で成功するまで、決してあきらめません。これが最後のメッセージです。みなさまと一緒に世界を変えることを楽しみにしています。本当にありがとうございました。