CROCODILE(クロコダイル)やCITERA(シテラ)などのファッションブランドを運営するアパレルSPA(製造小売業)のヤマト インターナショナル株式会社。2022年の春からクロコダイルのECサイトでFireworkの縦型ショッパブル動画を活用し、導入して間もなく大きな成果を生み出しています。
同社執行役員 マーケティング コミュニケーション部長の長尾享諭氏は、大学在学中からセレクトショップで働き、アパレル業界で起業。その後、実家のアパレル企業を継ぎ、ECでのCRM施策などで劇的な成長を実現した経験をもとに、2015年にヤマト インターナショナルに参画しました。同社のデジタルマーケティング・Eコマース施策をはじめ、新ブランドであるシテラの立ち上げや海外ブランドのリブランディングなど、幅広い業務を手がけています。
Fireworkを導入した理由として、ツールとしての利便性だけではなく、デジタル時代のアパレル業界の生存戦略を見据えたFireworkへの「共感」がありました。老舗アパレルが取り組む最先端の動画戦略とその思想に迫ります。
─デジタルやEコマース関連のこれまでの取り組みについて教えてください
ヤマト インターナショナルは、1947年に大阪で設立したアパレル企業です。
旗艦ブランドであるクロコダイルは1963年にメンズカジュアルブランドとしてスタートし、2023年に60周年を迎えます。2002年にはレディースラインもスタートし、今ではレディースも大きく成長しています。イトーヨーカドーなどの総合スーパーやショッピングセンターへの店舗展開で成長し、2022年現在、全国津々浦々に約900店舗を展開しています。
歴史の長いクロコダイルでは、お客様の年齢層はシニア層の60代が中心で、70代のお客様もいらっしゃいます。より若い世代にも訴求するため、3年前から全社を挙げて準備を進めてきて、この度リブランディングに取り組みました。重点テーマに掲げたのは「スタイリング」です。シャツ、パンツなどの単品訴求から、全身のコーディネートに合わせたスタイリング提案に注力しています。
スタイリング提案の背景として、お客様から「どう着こなしていいかわからない」「どういったアイテムを合わせたらいいかわからない」といったご意見がありました。こうしたお客様の課題解決のため、店舗ではファッションアドバイザー(販売スタッフ)やVMD強化によるコーディネート提案のサービスを強化していますが、Eコマースではどうするべきか。
SNSが台頭してきて、徐々に動画コンテンツの流れができつつあると感じていたので、スタイリングを動画コンテンツとして見せたいと考え、2021年の春に横型動画のツールを導入しました。1本6分程度の動画で通販番組のように着こなしを紹介し、視聴者が画面をタッチすると商品購入ページに遷移するインタラクティブな仕組みで、一定の成功をおさめたと考えています。
─そこから、Firework導入に至った経緯をお聞かせください
動画の成果は出ていたものの、外注による制作や編集に加え、ナビゲーター、スタイリストなどの演者さんを立てて多様な着こなしを提案していく番組は、トータルコストもパワーもしっかりかかります。そこで、もっと動画のバリエーションを増やして、自分たちで手軽に制作できるやり方はないかと考えていました。
当社ではシニア層のお客様が中心にも関わらず、7割のお客様がスマホでサイトを閲覧、ご購入されていますし、2年前にリリースしたクロコダイル公式アプリは約30万ダウンロードに達しています。また、お客様のアンケートでは、動画が横長のため、スマホの画面を横に倒して見ている方が多いことが分かりました。それはお客様の体験として適切なのだろうかと疑問だったのです。
ちょうど大手SNSでも「リール」など、縦長の動画表現が増えてきた時期でもあり、スマホで見られる縦型の動画を検討し始めました。ファッショナブルなインフルエンサーが投稿しているインスタグラムの縦型動画のような、雰囲気のあるコンテンツが自社のEコマースで実現できないか、と。
元々Fireworkには2019年ごろから注目していましたが、当時とはビジネスモデルも変わり、我々の求める「スマホ最適」「縦型」「短尺」という要素を兼ね備えた魅力的なサービスに生まれ変わっていたことから導入を決断しました。また販路やコンテンツを外部に分散化させるのではなく、自社のサイト内で展開すべきであるという思想が、Fireworkと一致していたことも決め手の1つだったと言えます。
例えばインスタグラムなどのSNS上にコンテンツを流すことで、再生数は稼げるかもしれませんが、我々はそれを目的にしているわけではありません。また、SNS上では購入・決済まで行うお客様はまだ少ないため、SNSにコンテンツを流しても、瞬間的に盛り上がったお客様の購買意欲が、自社のECサイトにたどり着くまでに下がってしまいますよね。
Fireworkを使えば自社サイト内に動画を設置することができるため、ショッパブル動画でもライブコマースでも購入までが自社サイト内で完結し、導線もスムーズです。この点がFireworkの最大のポイントだと思っています。
─Fireworkの活用方法とその成果について教えてください
現在は、レディース・メンズそれぞれのトップページに、グリッド形式で全身コーディネートのスタイリング動画を掲載しています。そして視聴者の方がアイテムを気に入った際に、動画内のリンクからすぐに購入ページへ遷移できる仕組みを構築しています。
導入直後の2ヵ月で、すでにショッパブル動画掲載商品の売り上げ比率は、掲載期間中のEコマース全体の15%に達しています。この数字は動画をご覧いただいてそのまま購入いただいた方やリターゲティングやMAの流れでご購入された方の比率ですが、今後は広告展開も含めてさらなる成果向上を目指しています。
ただ、動画を導入さえすれば劇的な効果が出るかというと、そうではありません。購入や売上につながるストーリーをしっかり設計し、マーケティングオートメーションツールなども駆使しながら、サイト内コンテンツとしてフィーチャーし、ストック動画としての特性を活かした戦略を持って実践することが重要だと感じています。その点は動画制作上も重視しています。また編集におけるカット割や音楽とのテンポの合わせ方など、お客様の反応や数字を見ながらチューニングしていますね。
動画制作については、導入当初から内製化を強く意識していました。自社内のスタジオを増設し、カメラマンにレクチャーしてもらい、カメラワークなどの技術を自分たちで習得して、インハウス化に努めました。
1本30秒ほどのショート動画を現在は毎月12本、年間で合計約150本の配信計画を引き、カメラマン1人、編集1人、スタイリスト他含めて3、4人ほどで制作・配信しています。1日に集中して12本撮影する効率的なオペレーションを設計することで、月間12本の配信を実現しています。紹介商品の販売実績データとコストとのバランスを見ながら、今後も日々改善を進めていくつもりです。
また、制作した縦型ショート動画はEコマースだけではなく、店頭の入り口にあるクラウド型の縦型サイネージでも流しています。クラウド上に本社からFireworkの動画データをアップし、そのまま全国の店頭に流れる仕組みです。
成果は定性的・定量的に分析していますが、店頭で流している動画もスタイリングの悩みを抱えたお客様にご好評いただいており、動画をきっかけに店内に入ってきてくださる新規のお客様も増えました。動画でご提案しているコーディネートをそのまま購入し、実践してくださるお客様もいらっしゃると聞いていますし、あわせ買いの効果で客単価の増加にも寄与しています。
こうした多面的な取り組みの実施と、効率的なインハウスの仕組みを構築したことで、制作本数の最大化とコストダウンが可能となり、Fireworkの活用全体を俯瞰しても、数百%の高いROASを実現し、非常に満足できる成果を挙げていると感じています。
─今後の展望についても教えてください。
これからのファッションビジネスはさらに動画がメインストリームになっていくと信じています。SNSのフィードではもう動画しか流れてきませんよね。コンテンツもデバイスに合わせて進化していきますので、スマホファーストになった今、特に縦型ショート動画に可能性を感じています。
今後、我々の資産である動画コンテンツ自体をどうマネタイズさせていくかということも、Fireworkと一緒に検討したいです。せっかく制作した動画コンテンツは、フローではなくストックにし、資産にしていくべきだと私は思っています。SNS上に流したコンテンツは自社の資産になっていくわけではありませんが、Fireworkで配信したコンテンツはしっかり資産化していきたいと考えています。
従来のアパレルは服をデザインし、販売することが価値でしたが、例えば、スタイリングについての悩みを解決するノウハウをお伝えしていくコンテンツは、洋服を販売するためだけのものではなく、その動画自体に付加価値を感じてくださるお客様もおられると思います。
私はDX(デジタルトランスフォーメーション)とは最終的に事業変革へつなげることだと捉えています。アパレルという事業で培ったHOW TOを動画化・コンテンツ化していくことで、新たなマネタイズが可能となれば、全然違ったビジネスモデルが出来上がるのではないでしょうか。
直近ではショッパブル動画だけではなく、ライブコマースにも挑戦したいですね。ライブ配信のアーカイブ動画は、それこそ資産として生かせるものだと思います。やはり我々の原点として、全てのコンテンツの目的はお客様の課題解決にあるという思いを軸足に、今後もお客様のためのコンテンツやソリューションを一番に考えてまいります。